レオナルド・ダ・ビンチの『白テンを抱く貴婦人の肖像』(ツァルトリスキー美術館所蔵)。肖像画のモデルは、ミラノ公ルドヴィーコ・イル・モーロの愛妾チェチリア・ガッレラーニ。ルドヴィーコ・イル・モーロには7歳の婚約者がいましたので、その娘が成長するまでの愛妾がチェチリア・ガッレラーニでした。そのチェチリアもまだ16歳ですから、成熟した女性ではありません。この賢い少女の眼差しは、画家レオナルドをしっかりと見つめています。この頃のレオナルドのメモに、肖像画が似ているかどうかは『鏡』を通して見るとわかると書いています。ルドヴィーコ・イル・モーロがレオナルドにチェチリアの肖像を描かせたのには、いくつかの意図があったと言われます。そのひとつが『教養』だったと言われます。レオナルドは、その知性と優雅な会話術でも群を抜いていましたから。チェチリアの見つめる視線、微かに微笑む少女の表情からは多くのことが読み取れるのです。チェチリアは、おそらく『鏡』を介在して「自分の姿」を繰り返し見たことと思います。チェチリア・ガッレラーニがやさしく抱いている「白テン」は、純潔の象徴とも言われますが、ルドヴィーコ・イル・モーロの姿かもしれないとも言われています。真偽のほどはわかりませんが、わたしは後者(寓意)だと思います。