池田満寿夫さんの多くの版画作品から『部屋の中の死』 を紹介します。池田満寿夫さんが版画をはじめたのは1956年、 友人の画家・瑛九の勧めがきっかけでした。 1966年の第33回ベネチア・ビエンナーレ展には、《 天使の靴》《タエコの朝食》 など28点を出品して版画部門の大賞を受賞。 32歳の池田満寿夫さんは版画家としての名声を得たのです。 これ以降、 池田満寿夫さんはマルチタレント並みに活躍するのです。 版画家としてだけでなく、 小説や映画制作まで幅広い表現を試みることになります。 この版画『部屋の中の死』は1974年の作品です。「 不機嫌な時期」と言われる頃に制作された1枚ですが、 わたしには強く印象に残っている版画です。この頃の版画には、 画面を横切る線や引っかき傷が描かれることが多くなります。 小説『エーゲ海に捧ぐ』が書かれたのもこの頃だと思いますが、 表現がストレートになり感覚的になってきた時期でもあります。 池田満寿夫さんの多くの版画には感覚的なイメージの合成にすぎな い作品も多いのですが、この作品『部屋の中の死』には『 異質なもの』を感じたのかもしれません。わたしたちは、 視覚的な異様さには敏感に反応するのですが、 この作品にはその異様さを感ずるのです。池田満寿夫さんの本『 思考する魚』には、その頃の「重苦しい感情」が書かれています。 そのせいか、この作品『部屋の中の死』には、 素直に陰鬱なものを感じてしまうのです。