ルドンの「蝶と花」
この「蝶と花」は、板に水彩で描かれています。水彩やパステルを使った作品が多いのもルドンの特徴です。頭の中に浮かぶイメージをすばやく描きとめるには、適した画材だと思います。ルドンは、蝶を繰り返し描いています。昔から蝶は、「死者の魂」の象徴とされています。おそらくルドンは、死のイメージを意識してこの絵を描いたものと思われます。若き頃、妹や弟の死を、ルドンは目にしています。幼い息子の死にも、立ち会うことになります。パステルの粉のように、ルドンの絵は、いつも危うくデリケートなものになります。ルドン自身、蝶のように彷徨しているように見えます。晩年、花を繰り返し描いていますが、この美しい花こそ「母親のイメージ」であり、この絵の片隅にも見られます。ルドンは、幼いときに母親に捨てられています。この『心の傷』が、すべての作品に見られます。わたしは、ルドンの絵に「風」を見ているのかもしれません。
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