ついでにというわけではないが、靉光の代表作『目のある風景』 も紹介しておきましょう。『馬』も『目のある風景』も、 描かれたものは靉光の分身だと、わたしは思っています。 やせ細った「彷徨う馬」も、気味悪く「冷徹な眼」も、 靉光その人に違いないのです。「靉光」、画名「靉川光郎」、 本名・石村日郎の苦悩は時代の苦悩でもあり、「 孤独な画家そのものの姿」と言わなければならない。 戦時下特有の陰鬱な風の中で、佇む靉光の「純真さ」 がこの作品に見て取れます。ともすると、 その精神が引き裂かれかねない時代状況にあって、 これほどまでに明確な『意志』を描いた絵は見たことがない。 戦時下の画家にとって「抽象表現」は逃避に見られかねないが、 この『冷徹な眼』は時代を明確に射抜いています、 リアルそのものと言っていいのかもしれません。
0 件のコメント:
コメントを投稿