2011年2月13日日曜日

靉光の代表作『目のある風景』


ついでにというわけではないが、靉光の代表作『目のある風景』も紹介しておきましょう。『馬』も『目のある風景』も、描かれたものは靉光の分身だと、わたしは思っています。やせ細った「彷徨う馬」も、気味悪く「冷徹な眼」も、靉光その人に違いないのです。「靉光」、画名「靉川光郎」、本名・石村日郎の苦悩は時代の苦悩でもあり、「孤独な画家そのものの姿」と言わなければならない。戦時下特有の陰鬱な風の中で、佇む靉光の「純真さ」がこの作品に見て取れます。ともすると、その精神が引き裂かれかねない時代状況にあって、これほどまでに明確な『意志』を描いた絵は見たことがない。戦時下の画家にとって「抽象表現」は逃避に見られかねないが、この『冷徹な眼』は時代を明確に射抜いています、リアルそのものと言っていいのかもしれません。

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